4人が本棚に入れています
本棚に追加
翌朝、ウザいお父さんから、「お誕生日おめでとう~」とすり寄られ、私は足蹴りで返した。
「昔は喜んでくれたのに」
「時の流れは残酷でしょ?」
お父さんに冷めた言葉で返した後、私はベランダへと移動し、隣の家を見る。幸一、大丈夫かな……。
・ ・ ・
昨日と同じような夕焼け空の下、私達家族は手を合わせていただきますをする。それと、ハッピーバースデイの歌も。幾つになっても誕生日は祝おう。それがうちのしきたりみたいなものだ。子供臭いけど、悪い気はしないかな。
そこへ、ピンポーンと家のチャイムが鳴る。母が家のカメラを見に行くと、カメラ越しに、「新田貸して下さ~い!!」と幸一の声が聞こえてきた。恥ずかしいな、もう。少し嫌そうな顔をするお父さんの隣を通っていき、私は急いで玄関へと走る。
「何なのよもう」
「ちょっと来いよ」
幸一は何のためらいも無く私の手を握ると、そのまま幸一の家へと走り出した。
「何なのもう」
なんて気を抜かしていたのも束の間だった。幸一の家に入り、リビングへ向かったその時、視線の先に映った物に驚く。
ケーキだ。それも、何段にも重なってて、すごく大きい。これはまるで……。
「ウェディングケーキみたい……」
「ま、ソレを作ったからな」
「どうしてまた?」
私が尋ねると、幸一は曇り一つない笑顔で答えた。
「だって今日は、お前の誕生日じゃんか」
「誕生日だけど……その為にこのでかいのを?」
「ああ、これは俺からの気持ちだ!!」
気持ち? 気持ちってことはもしかして……いや、まさか。
「あのさ、幸一!」
「好きだぜ、真純!!」
「うそ……」
聞きたかった言葉が、あまりにもすんなりと幸一から出てしまって、まるで夢を見ているようだった。けれど、頬を引っ張っても頬は痛くて。やっぱり、現実だった。
「大会終わったら言おうと思ってたんだ。ちょっとウェディングケーキは重いと思ったけど、これくらいしないと伝わんないって思ったんだ、お前には。でもあれだから、初めは付き合うだけとかの気持ちでも……」
「幸一! 私も、大好き!!」
私は幸一に抱き着き、二人で喜び合った。
最初のコメントを投稿しよう!