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「……っておい待て、これじゃ全然恋出来てないじゃんか!!」  折角のチャンスだったのに。これに気付いたのは帰宅後だった。  とは言え、あんな強情そうな男と素敵なカップルライフを送れるとも思わなかったし、まぁ良いか。今日は休みだし、DVDでも借りに行こう。  ・ ・ ・  家を出て、レンタルビデオ店まで歩いていく。今日は何を見ようかな。恋愛もの、アクション、それともホラーかな。 「今日は……やっぱ胸キュン映画かな」  どうせ誕生日までに彼氏なんて無茶だし、せめて映画で恋した気分でも味わうか。と言うことで、私は恋愛映画を見に行くことに。恋愛映画のスペースへ移動し、気になる映画を探す。 「あ! これ、見たかったやつ」  少し高い所に置いてあったので、背伸びをして取ろうとした。そしたら、私の手に少し大き目な手が触れた。 「あ…す、すみません」 「いえ。どうぞ。これ、見たかったんでしょう?」 「え?」  驚きで目をぱちくりさせると、黒髪で眼鏡をかけた青年がにこりと笑う。 「取るの大変そうだったから」  ……親切で素敵な人!! でもこの顔どこかで……。 「あ、有難う!」 「いいや。ねぇ、この後暇?」 「は、はい」 「それじゃあちょっとどっかでお茶しない? 俺と」  両肩を掴まれた瞬間、黒髪の青年の顔が、昨日の白髪の青年の顔と被り、「あーっ!!」と思わず声を上げた。私の上げた声に、周囲の視線が集まり、私はすみませんと頭を下げる。 「アンタ、昨日の俺様男でしょ! なんで私に付きまとうのよ」 「何だバレてたのか。だから言ったろ、お前と恋する為だよ」  眼鏡をいちいちクイッと上げて言うな。 「私、貴方みたいな人とだけは恋したくないの」 「俺はお前みたいなやつと恋をしたいんだ」 「え……」  不覚にも、心が揺らいでしまった。けれど、こんなかっこいい人が自分みたいな普通の人間を好きになると言うことは到底思えない。もしや、詐欺とか!? 「そんな軽い言葉、信じてもらえるワケ無いでしょ!」  私は彼の肩を押し、そのままお会計へと駆け出しいていった。そんな私を、彼は茫然と見つめていた。
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