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折角DVDを借りたことだし、映画でだけでも胸キュンを感じちゃいますか。DVDをデッキに入れ、私はこれから待つ胸キュンに胸を馳せる。
あ、始まった……。
この恋の設定は、幼馴染のすれ違いの恋のお話なのだそう。特に何かを意識して借りたワケではなかったけれど、幼馴染の彼と言う設定の所為か、どうしても幸一を想像してしまった。特に、彼が秀才で、幼馴染の少女はどこか遠い人のように感じてしまう所とか。
この彼は、最終的には海外の学校へ行くことになり、二人は離れ離れになる。お互い好きな気持ちはあったのに、思いを伝えられないまま終わり、物語はエンディングへ。
そして、エンディング終了後。人によっては最後まで見ずに帰ってしまう所で、二人は十年後に再会してお互いの思いを伝えあった。
「……良いな、こうなれたら」
「本当にこれで良いのか?」
もしや。恐る恐る声がした隣を向く。すると、そこには恐るべき人物が座っていた。何故か髪を金に染めた、あの青年。しかも、目にアイラインを引いていて、パンク系の人みたいだ。
「ど、どうやって入ったのよ変態!!」
「そんなことより、本当にこんな結果で良いのかよ。これじゃあ、幼馴染と分かり合えるのは十年後だぞ」
「それでもロマンがあるじゃない」
「俺は映画の話じゃなく、実際の話をしているんだ。いるんだろ、気になる幼馴染が」
図星だった。今までは恋と呼べる程のものなのか迷っていたが、この変な男に付きまとわれた時、こう言う人間と付き合いたいワケでは無いと感じた。そしてこのDVDを借りて見て、幸一と何度も姿を重ねてしまった。
「あいつは今も迷ってるよ。今の俺のように」
「え? 幸一のこと知ってるの? 貴方って一体……」
「行ってみなよ、幸一の所」
行ってどうしろと言うのだ。そう聞き返したかったのだが、彼の目はどうにも真剣で、断る隙が無かった。私は渋々頷き、隣にある幸一の家へと向かった。
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