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 外へ出て見れば、もう夕焼け空だった。それも、もうすぐで黒く塗りつぶされる。急がなくちゃ。  チャイムを鳴らすと、幸一のお母さんが出てくる。困ったな、よりによって厳しいお母さんの方か。 「あら、真純(ますみ)ちゃん」 「幸一いますか、出来れば会いたいんですけど……」  会ってどうするんだよ。改めて自分に突っ込むが、答えは見つからなかった。 「ええいるわよ。丁度良かった、どうぞ中へ上がってって」 「え? は、はい」  妙にウェルカムなお母さんにびっくりする。此処最近は幸一の大会に向けて、誰とも会わせないくらいの様子だったから。何か心境の変化でもあったのだろうか。  家の中に入れてもらい、キッチンへと連れていかれる。そこにいたのは、必死にケーキを作っている幸一だった。けれど、そこには白いケーキ、茶色いケーキ、黄色いケーキが並んでいる。 「あの子ね、ずっとあの調子なのよ。色んなケーキを作っているけど、どれもしっくり来ないみたいなの。この調子じゃ大会に間に合わないって言ってるんだけど、聞く耳持ってくれなくて。真純ちゃんから何とか言ってやって」  それで私を中へ入れてくれたと言うことか。理由がわかってスッキリした所で、私は彼の下へ歩いていく。 「こーいち!」 「わっ、新田じゃねーか驚かせんなよ!!」  幸一は驚いた様子だったけど、すぐ後に口元を緩ませた。良かった、嫌がられているワケでは無さそうだ。 「何よそのケーキの量。まさか全部出しちゃうつもり?」 「お前なぁ……」 「いっただっきまーす!!」  私は出来上がった三つのケーキすべてにスプーンを入れ、それぞれを順々に口に含んだ。 「ちょっと、お前俺の作品に何すんだよ!!」 「どれも美味しいじゃん」 「誰が作ってると思ってんだよ。そりゃあそうだろ?」 「だから、どれも美味しいんだよ。あんたが作れば」 「はぁ?」 「アンタが作ったら何でも美味いんだからさ、何だって良いじゃん。今作りたいもの、作っちゃえば良いじゃんか!!」  私はケーキを食べ進めながら言った。  あまりに単純で子供くさいと感じたのだろうか。茫然とした幸一は、しばらくして、プッと吹きだした。
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