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豪華絢爛夜の街。
店から溢れる金色の光、誘いをかける女の声。
フラリフラリと行く男の、袖を引くのは籠の鳥。
「おい、青藍。」
「あら、今日は客を取ってなかったはずだけど?」
「別に今日は太鼓持ちしごとじゃねェよ。何だってあの旦那断ったんだ?」
「旦那?誰のこと?」
「しらばっくれんな。藤田屋の旦那だよ。お前のこと指名してたのに袖にしたって話じゃねえか。うまく行きゃあ早いうちに身請けしてもらえただろうに。」
きゃらきゃらと女は客に見せる笑顔でなく笑う。
「なあに?佐吉は私にとっとと店から出ていってほしいの?」
「……そうじゃねェさ。でもこんなところで身体売ってるより外にいた方がマシだろ。藤田屋は大店だから楽して暮らせるぜ?」
誰かに聞かれれば引っ叩かれるくらいはされるだろう、声を低めてそういえば女はまた笑う。
「ふふふ、ここじゃないとできないことがあるのよ。」
「ここでできねェことの方が多いだろ。」
「このお店、牡丹灯篭は特別なの。」
少しだけトーンを落として話す女は少し酔っているようで、宝物を少しだけ他人に見せてみるかのように、ひそりと、しかし微かに喜色を滲ませ少女のように言う。
「牡丹灯篭にいる青藍はね、いずれ王子様が外の世界に連れ出してくれるの。」
クスクスと楽しそうに女は傍にあった賽子をふった。
「ふうん。」
オウジサマが何なのか知らない。女がまるで夢でも見るように語るのだ。きっとどこぞの大名か大商人のことなのだろう。
いずれにせよ、それはきっと俺じゃない。
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