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青藍は変わり者だった。
他の遊女たちは客の相手をしているときもそうでないときも口調も態度もあまり変わらない。だが青藍は本当に極端だった。客を取っているときは他の遊女と遜色ないのに部屋から上がったらまるで町娘のような話し方、振る舞い方をするのだ。本来ならやり手に折檻されてもおかしくないが、どうも青藍は偏屈なやり手からも気に入られているらしくその態度は直されない。
遊女たちのほとんどが、外の世界に憧れている。憧れつつも、どうしようもないものと考えている。
一部の遊女は身請けされて花街から出られるが他の者はそうではない。借金の形に売られてきた女は返せるまで出られないし、一般的な働き方もわからず飯炊きややり手として廓に残る。
だが青藍は違う。
外に出たいと思っているらしいが、気に入られ身請けの話が出ても袖にしてしまった。遊女でいたいから身請けを断る者もいるが外に出たいはずの青藍も断るのだ。
そして大棚の旦那の話をおじゃんにしたときに問うてみれば、オウジサマなる人を待っているという。
少しずつ話を根気強く聞いていくと、どうやらそのオウジサマとやらは青藍の運命の人であり、ひーろーなのだそうな。オウジサマは大棚の若旦那や歌舞伎役者、若侍などがいるらしいが、その中でも青藍の待つ運命の人はどこぞの領地の大名なのだそうな。
運命の人を待つがために、青藍は牡丹灯籠を去らない。
運命の人とやらが来るまで、おれは青藍を見ていられる。だがそれが来たとき、きっと青藍は何の未練もなく外へと旅立つのだろう。
おとぎ話のようなこと。幼子にも鼻で笑われてもおかしくないというのに、それを笑い飛ばせないのは青藍が冗談で言っているのではなく本気で信じているからだ。
信じているから、青藍はこの仕事を耐えられる。遊女になって短くはないのに擦れていない。それ聞き出せたのは俺が初めて花街を訪れてから三年たったある夜だった。
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