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昔と違い、売れっ子の青藍は花魁まであと一歩である。花街の菩薩、花魁になればそれこそ客は選べるし、運命な人たる御大尽の目にも触れるだろう。
もしおとぎ話のように、青藍の元にオウジサマが訪れたなら。
俺はいったいどうすれば良いのか。
馬鹿馬鹿しい運命を待ち続ける女に恋した馬鹿馬鹿しい男は、いったいどうするべきなのか。
「どうしたの佐吉?」
形の良い唇が、まるで町娘のように俺の名を呼ぶ。
「いんや、なんでもねェよ。」
お前はオウジサマの名を、どんな声、どんな顔でで呼ぶんだろうな。
それから数か月後隣国を治める若い大名の家の輿入れを伝える瓦版がこの花街にもばら撒かれた。
青藍の信じた運命の人が、別の女と一緒になったとわかったのは、その瓦版を抱きしめ音もなく泣く彼女を見たときだった。
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