箱入り娘(物理)と狼王 【後】

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圧倒的弱者であり脆弱な彼女は、勇気ある人間ではないのだと、やっと理解した。それはきっとアランが勇気ある者ではないのと同じだ。 そこにあるのは勇気などではない。 そして今私に必要なのも勇気ではないのだろう。 「リーファ……、」 「何です、ガオラン様。」 「私に男女の機微というものはわからん。器用な性質でもない。口もそう達者でもない。もしかしたらお前の理想とはかけ離れているかもしれない。だがお前が望むならどんなものでも贈ろう、どんな努力でもしよう。」 じっと黙りこちらを見返す彼女の額にちょんと鼻先を寄せた。 「だからどうか不甲斐ないに私が、お前を愛することを許してはくれないだろうか。」 どうあがいても恰好のつくような気の利いた言葉は出てこない、それでも私の精一杯の言葉に、リーファは大きな笑顔を咲かせてくれた。 リーファがこの国に来て数年、ある日彼女は人の国のおとぎ話を語った。それは醜い野獣の姿に魔法で変えられた傲慢な王子が、とある美しい村娘により冷たく凍り付いた心を溶かされ、その愛によって魔法が解け結ばれたという話だった。語り聞かせるのを横で聞いていたが、きっと彼女はその物語の結末に納得してはいないだろうな、と一人思った。 少なくとも私の愛すべき妻の理想の結末は今彼女自身が持っているのだから。
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