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「ええ、ええ、わかってますとも!貴方の恐ろし気な見た目では再びお会いになってもリーファ様は委縮してしまいます。そこでこちらです!」
大きな音を立てて机の上に置かれたのは一冊のファンシーなノート。
「……ノート、か?」
「いいえ!交換ノートにございます!」
こうかんノート。
聞き覚えのない言葉だった。
アレン曰く、文通のようなものでノートにメッセージを書いて相手に渡し、相手も同じようにメッセージを書いて返すらしい。なぜ手紙でやらないのか。
普段の私であればおそらく一笑に付しただろう。
だがそのとき私にはノートは希望の光に見えたしアレンは背中に後光を負っているように見えた。
さて、かくしてこの交換ノートと向き合い早1時間。いまだ一文字たりともかけていない。
何を書けばいいのか。メッセージと言っても内容は?書き出しは?敬語は使うか?そもそもこんな恐ろし気な獣人からのメッセージなど不愉快ではないだろうか。
悶々と考え2時間。まるで軍事会議を終えた後のような疲労感と共にこうかんノートをアレンに託した。
この時の私は、まさかアレンが他の者達にもこうかんノートについて話していたなんてことは知らないし、その日のうちにそのこうかんノートに返事書かれ、再び愛らしいノートが無骨な部屋を訪れることをまだ知らない。
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