箱入り娘(物理)と狼王 【前】

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そう答えたものの、正直いずれ、としか思っていませんでした。ええ、よもやアランさんが驚くべき行動力を発揮し陛下のご予定を調整するように提言しそれを実際に叶えさせるとは努々思っておりませんでした。まだここに来て一カ月ですが、アランさんはメイド長でありながら凄まじい発言力を持っていること罅体感しております。いったい何者なのか他のメイドさんに聞いてみたところ、陛下の副官である虎のアルドラ様の奥様であるようでした。同族でなくとも結婚するのかとか二人に子供がいるならどんなモフモフなのかとかいろいろと突っ込みたいところもございます。しかしだからと言ってそれほどの発言力があるのかと尋ねてみましたところ、苦笑いで姉さん女房ですから、とお返事をいただきました。姉さん女房だから何なのだと聞きたいところでございますが、どうも本当にそれがすべてのようでございました。……ギルヴァーン王国の本当の支配者はアランさんである可能性が浮上しつつあります。 あれよあれよと外堀を埋められ、アランさんに見送られ陛下の部屋の前。イマココ。 アランさん、最初あんなに私の心配をしてくださっていたのになぜか今回はぐいぐい来ます。曰く、もどかしいとのこと。そんなこと言われても、と思いながらこうして陛下の部屋の前へ来たは良いものの、いまだこの大きな扉をノックする勇気がわきません。ここに突っ立って早数分になりますが、廊下を行く方々、悉くにアルドラ様と似たような微笑ましいものを見る温かい視線を送られております。ギルヴァーン王城の連絡網怖い。 いい加減居た堪れないので中に入りたいのですが、何度もノックするために手を上げては下ろすを繰り返しております。 会いたい気持ちは山々ございます。 好みはどストライク、ノートを見る限り大変優しく心の広い方、モフモフ、初めてお会いした時からお慕い申し上げていたと言っても決して過言ではないのですが、、どうにも、なんと申しましょうか、常識人的な恥ずかしさが今更になってこみ上げてまいりまして、明日顔面が筋肉痛になるのではないかというほどの百面相を一人繰り広げているのです。 モフモフに対する愛が偏執的なのは重々自覚しているのですが、いったん時間を置いてクールダウンを余儀なくされると否が応でも常識が舞い戻って参ります。
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