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「……私は、獣人だぞ?」
「知っています。」
「人間と違って、身体も大きく尻尾もある、毛むくじゃらな上に牙や爪まであり、好戦的だ。」
「大きな身体も逞しくて素敵です。尻尾も牙も爪も、毛も私には魅力的に見えています。人間だから、獣人だから、ではございません。私は他でもない貴方様を好いているのです。」
人間の美的感覚を、私は知らない。だが少なくとも私たちの見た目は多くの人間から忌避されることは知っている。それなのに彼女は私のすべてを肯定する。
まるで許されたような気分になってしまう。
「……お前はまだ若い。」
「それでももう分別もつかない子供ではございません。」
「……無理して怯えを隠さなくとも、」
「信じていただけないのなら、私をそばに置いて少しずつでも良いので本心であることを感じてくださいませ。」
ああ言えばこう言う、完敗だった。
最初彼女が部屋来た時とは違う意味での諦めがついた。いや、諦めというより覚悟という言葉の方が相応しいかもしれない。
「……本当に良いのか。」
「良いも何も、貴方様の色よい返事以外には何も望んではいません。」
少し腕が緩み、肩口から微かに首を上げてリーファはちらりと見上げた。
「逃げる機会はこれで最後だ。今なら逃げても咎めはしない。」
「逃げたりなどはしません。私はただ貴方様の御側に居たいのです。」
行き場を失っていた両手を、そっと壊れ物でも扱うように彼女の肩にかける。
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