箱入り娘(物理)は輸送中

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よくある話にございます。政略結婚などこの世界では一般的で、王家に生まれたからにはいずれ私もそうなると思っていたので、ついにこの時がきた、と思っておりました。小娘一人の輿入れで国が救われるのなら安いものです。 しかしカルカナ王国は難色を示しました。 それはギルヴァーン王国が獣人で構成されるためでした。 獣人は人間よりはるかに身体能力が高く、好戦的。そんな野蛮な国に娘を嫁がせるなど……、とたいへん渋りました。国民も無理していく必要はないと、いざとなれば国民一丸となって魔族と戦う、獣人の助けはいらないとまで言っていただきました。 明確な差別はありません。しかしみな彼らを恐れていました。 私は、私一つの命で救われるなら、とギルヴァーンに嫁ぐことを了承しました。 生まれてからなかなか現実を受け止められず死んだように生きていた私を愛し育ててくれた家族の恩に報いるため、私のことを案じてくれる心優しき国民のために。 そう言って私、リーファ・カルレアンは滂沱に見送られ旅立ちました。 しかしながらその実、私は割かし乗る気だったのです。 私は生まれてこの方獣人を見たことがありません。ゆえにどうしても気になることがあったのでございます。 どこまで獣なのか、と。 生前私は数度漫画やアニメを見て思ったのです。 人間の姿をしているのに頭の上に生える一対の獣の耳、いわゆるケモミミ。 私は愕然といたしました。 頭蓋骨の形は果たしてどうなっているのか。鼓膜は4つあるのか。なぜ4つも必要なのか。 ぎりぎり人間の耳の位置にケモミミがあるなら許せます。しかし頭上の耳はギルティにございます。骨格が気になって内容に集中できません。 逆に好みの物もございました。 ほとんど二足歩行の獣、と言った風貌。二足歩行、時に四足歩行、人語を介す、ほとんど毛におおわれている、顔は人間に近すぎず表情が動く以外獣、ムキムキ。 重要なのはモフモフムキムキ。この二点でございます。 私は獣人なるものが気になってしょうがないのでございます。美しい建前を用意したただの好奇心でございます。 もちろん、もし国民のおっしゃるように野蛮な方々であれば、私は食べられてしまうかもしれません。もちろん、物理的な意味で。 特に一応私は王に嫁ぐことになっているので、当然王は肉食獣系なのでしょう。
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