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あの一件から一夜明け、直虎は生徒指導室にて担任の北条と二人きりで話をしている。
「それで、相手の男を殴った…ということか。」
「悪い、松平と木下というヤツを守ろうとしてつい手が出ちまった。北条さん、俺…あんたとの約束を破っちまったよ。『この高校では暴力を振るってはいけない』というここに来て最初に交わした約束をな…」
「気にすんな…お前は正しいことをしたんだ。俺の仲間を守ってくれたんだから、それを俺は暴力行為だとは思わない。むしろ感謝しなくちゃな、ありがとう…」
北条は椅子から立ち上がって、直虎を励ますように、彼女の頭をポンポンと優しく叩く。
「しかし、この一件に木下と松平も絡んだともなると…こいつは厄介なことになるかもしれない。おまけに、PTA役員からも目撃情報があるからな…」
「北条さん、俺はどうすればいいんだ?これじゃあ、俺がこの学校でやらなきゃいけない"計画"ができねえ…なあ、どうすればいいのかを教えてくれよ!」
「落ち着け!とりあえず座るんだ。」
「分かった…」
北条に詰め寄る直虎だが、彼の指示をすんなりと聞き入れて、椅子に大人しく座る。
「とりあえず、この事については俺がなんとかしておく。お前が正当防衛でやったと言えばどうにかなるだろうからな…それで、いいな?」
「すまねえな、助かるぜ。」
「うん…ところで、お前が言うその"計画"って敵討ちのことだろ?」
「ああ、俺はこの学校にあの事件の黒幕がいるというあんたからの情報を得てここに来た。それ以上の理由なんてねえよ…」
「いや、あの情報はお前が真実を知りたいと言うから教えたことだが…それほどにもアイツのことが憎いのか?まあ、愚問だろうけど…」
「ああ…アイツは俺のお父さんを自殺に追い込んで、お母さんを自らの手で殺したんだ。だから、俺がこの手でアイツをぶっ倒す!」
バン
直虎はこみ上げる怒りの拳を机に叩きつける。その威力によって、机に軽くヒビが入った。まさに、彼女の怒りの大きさを物語るものだ。
「まあ、相手も相手だ。下手に仕掛けたら、権力を使ってお前を潰しにかかることを忘れるなよ?」
「そんなことを恐れていたら、何も始まらねえよ。じゃあ、俺は授業があるんで…」
直虎は椅子から立ち上がり、怒りを抑えながら生徒指導室を後にする。
「直虎…」
その背中を見て、北条は彼女の名前を呟くのであった。 『織田』ではなく、『直虎』と…
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