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ここは岐阜県の不破郡関ヶ原町にある仙石高校。日本一個性豊かな生徒の通う学校としてこの地域では有名だ。
「知ってるか?今日、ウチのクラスに転入生が来るらしいぞ!それも女らしいってよ。」
「マジでか!?可愛い子だったらナンパしてみせるぜ~!!」
「…」
新年度が始まって数日が経ったこの日、このクラス…2年C組に女子生徒が転入してくるのだが、それも関係なく静かに本を読んでいるこの少年こそがこの物語の主人公、木下満(きのしたみつる)である。彼は昨年の秋に行われた生徒会総選挙にて生徒会役員として立候補し、見事に当選して生徒会入りをしたのだ。それに相応しく、成績優秀スポーツ万能という文武両道な面があるのだが…内気で引っ込み思案な面がある。
「みっつる~!」
バシッ
「あいたっ!?いきなりどうしたの、絵美ちゃん?痛いよ…」
満の背後に回っていきなり彼の右肩を強く叩いた少女の名は松平絵美(まつひらえみ)。満とは幼稚園時代からの付き合いで、所謂幼馴染である。彼にとっては唯一の友達にして親友だ。
「また一人で本を読んでたんだ…そんな暇があるなら新しいお友達を作ったらどうなの?」
「僕は人付き合いが苦手だからね…お友達は絵美ちゃんだけで十分だよ。」
「あのね、満は男の子なんだからさ…男の子のお友達も作ったらどうなのって意味で話してるんだけど…それよりも、転入生ってどんな子が来るのかな?」
「僕には関係ないよ。新年度に一人増えようが二人増えようがその人とは話す機会なんて無いから…」
満は淡々と絵美の質問に答えを返す。そう、彼は内気であるが故に、こういうことには奥手なのである。なので、絵美以外のクラスメイトとは上手く話すことができないのだ。
「満って本当にこういうことに臆病なんだよね…」
「まあ、僕が怖がりなのは事実さ。でもね…僕は絵美ちゃんと一緒にいるから安心して学校にいる。ずっとお友達だったからね…君がいたから、僕は今ここで頑張れるんだよ。いつも、そばにいてくれてありがとう。」
そして、満を席を立って言葉を続けるかのように感謝の気持ちを笑顔で伝える。その答えは揺るぎなく本心だ。
「バカ…(満って本当に私のことを大事に思っているんだね。嬉しいな…)」
絵美は小さな声で呟く。満は内気な面もあるが、純粋な心を持っている。そんな彼の優しさに彼女は言葉では表さないけども、支えられているのだ。
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