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「紹介しよう。茨城県の牛久市にある稀勢学院高校からやって来た、織田直虎(おだなおとら)さんだ。本人の都合により、この仙石高校に転入することになった。それじゃあ、自己紹介を頼んだぞ。」
「織田直虎だ…よろしく。」
転入生…織田直虎は一言だけ言い残して、自己紹介を終えた。彼女の目はまるで虎のように険しく、髪型も金髪のショートヘアで、まるで女とは思えないような殺気が溢れている…と言うより、見た目はほば男だ。身体的特徴を除いて…
「うむ。席は…木下の隣が空いてるな。織田は木下の隣の席に座ってくれるか?」
北条がそう言うと、直虎は黙って頷いて満の隣へと向かう。そして、彼女は空っぽのバックを机の横にかけて座った。
(この織田さんって人は何者なんだろう?クラスのみんなが凍りつくように黙っていたけど…)
そんな風に満は彼女を見ていると…
「なに俺をジロジロと見てるんだよ!」
「えっ、あっ…ごめん。」
視線に気づかれたのか、直虎から怒られるのであった。
「そんなに転入生が珍しいか…それともアレか?俺に喧嘩を売ってるつもりじゃねえだろうな?」
「いや、そんなつもりは…」
満は言葉に詰まってしまう。これほどにも人から威圧されれば、誰が相手だろうと怯んでしまうのは無理もない。しかし、相手の直虎の目つきは恐ろしいものだ。おまけに、ドスを効かせたような低い声で脅すように押されればもう言葉など出るはずがない。
「どうだって言ってんだろうが!!」
ガタン
その時、彼女の怒りが爆発したのであろうか…いきなり机を蹴り飛ばした。
「あっ…あの…その…」
「お前、いい加減にしろよ?さっきから俺の方をジロジロと見やがって…どうせ俺のことをぶん殴りたいとでも思っただろ!転入生を受け入れたくねえんだろうよ!!」
直虎は満の胸ぐらを掴んで、怒りをぶちまける。別に彼は喧嘩を売ったりだのそういうつもりではなかったのだが…この状況にクラスのみんなの視線は一点に集中していた。
「やめろ、織田!転入早々暴力沙汰を起こしたら退学にするぞ!!」
「チッ…」
北条の言われるがままに直虎は舌打ちをしながら満を離して、逃げるようにして教室を立ち去る。一方の満はそんな彼女の背中を呆然と見つめるのであった。
(あの子、泣いていた…心が。)
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