虫の都合

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虫の都合

ルールールルルー ルールールルルー そのメモは虫に食われた。 手にした男は面喰って即座に道端に捨てた。 そこに残されていた指令に従わなければ、しばかれて泣く羽目になるから。 ルールールルルー ルールールルルー 人間たちが自分たちの鳴き声を美しいという。 そりゃあ、美しいさ。 相手を口説くときの声はな。 色気がなくちゃモテ期は来ねえ。 声フェチに訴えるわけよ。 ルールールルルー ルールールルルー この美声を保ち、望みを手に入れるためには、好き嫌いなく何でも食わなくてはならない。 雑食では決してない。 喉と声に良さそうな文字を選んで食ったのだから。 組織によってそんな識別知能を与えられた。 昨日食ったのは誰かの手紙だったみたいだな。 望み通り、探さねえよ。 面倒なことに巻き込まれるのはごめんだ。 せっかく組織から逃げ出してきたのだから。
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