3/7
50人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
八時過ぎ。 漸く仕事が片付いて帰る支度を始める。 内容を見ると正直それ程急ぐものでもなかったのに、なぜ敢えて今日それを頼む? その仕事を頼んできた相手とは元々反りが会わない。 苦手だった。 多分彼も私の事を嫌っている。 いつも他の人には優しいのに、私にだけ態度が大きく異なる。 良くて無視。一番嫌なのは合った瞬間あからさまに逸らされる視線。 私が彼に一体何をしたと言うのか。 そんな事を繰り返されたら、誰だって嫌になる。私でなくても嫌うだろう。 出来ればその彼が戻ってくる前に退散したい、と支度を急ぐ。 それなのに一歩遅かった。 「あれ?もう、終わったんだ?」 「……はい。机の上に置いてありますので確認よろしくお願いします。お先に失礼します」 そう言って、彼に背を向け歩き出した。 「あのさ、飯食いに行かない?」 ……どうしてお互い嫌ってるのに、わざわざ行かなきゃいけない? 誘うその声だって上ずってる。 別に無理して誘うことないのに。 「すみません。今日はもう、遅いですから」 「あ、あぁ……そう、だよな。それじゃあ、俺、車で来てるから送るよ」 どうした? 今日に限っておかしい彼の言動に、私の表情も怪訝になる。 「いえ、大丈夫です。お先に失礼します」 「え?あ、ちょっと待てって」 再び彼に背を向けて一歩踏み出したところを、彼の腕が私を止めた。 彼の謎の行動に、さすがの私も切れそうになったがやっとの事で抑えた。 私も大人になったなぁと思ったのも束の間、彼の睨む目に私も喧嘩を売りたくなった。 「何ですか?あの……前から思ってたんですけど、私、大山さんに何かしましたか?何か言いたいことあるなら、はっきり言ってください。」 「え?」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!