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八時過ぎ。
漸く仕事が片付いて帰る支度を始める。
内容を見ると正直それ程急ぐものでもなかったのに、なぜ敢えて今日それを頼む?
その仕事を頼んできた相手とは元々反りが会わない。
苦手だった。
多分彼も私の事を嫌っている。
いつも他の人には優しいのに、私にだけ態度が大きく異なる。
良くて無視。一番嫌なのは合った瞬間あからさまに逸らされる視線。
私が彼に一体何をしたと言うのか。
そんな事を繰り返されたら、誰だって嫌になる。私でなくても嫌うだろう。
出来ればその彼が戻ってくる前に退散したい、と支度を急ぐ。
それなのに一歩遅かった。
「あれ?もう、終わったんだ?」
「……はい。机の上に置いてありますので確認よろしくお願いします。お先に失礼します」
そう言って、彼に背を向け歩き出した。
「あのさ、飯食いに行かない?」
……どうしてお互い嫌ってるのに、わざわざ行かなきゃいけない?
誘うその声だって上ずってる。
別に無理して誘うことないのに。
「すみません。今日はもう、遅いですから」
「あ、あぁ……そう、だよな。それじゃあ、俺、車で来てるから送るよ」
どうした?
今日に限っておかしい彼の言動に、私の表情も怪訝になる。
「いえ、大丈夫です。お先に失礼します」
「え?あ、ちょっと待てって」
再び彼に背を向けて一歩踏み出したところを、彼の腕が私を止めた。
彼の謎の行動に、さすがの私も切れそうになったがやっとの事で抑えた。
私も大人になったなぁと思ったのも束の間、彼の睨む目に私も喧嘩を売りたくなった。
「何ですか?あの……前から思ってたんですけど、私、大山さんに何かしましたか?何か言いたいことあるなら、はっきり言ってください。」
「え?」
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