8人が本棚に入れています
本棚に追加
しぼみこんだオオサンショウウオさんに問う。
「それじゃあ、蛙の王子に恨まれ、こうして追い掛け回されているあなたは、いったい何者なんですか?」
ぐ、と押し黙り、それから何度か大きな口を開閉させた。だがそれは声にならない。流石にオオサンショウウオに読唇術を使うのは無理があった。全く読み取れない。
「ダメだ。どうやら自分で自分の正体を言うことは、呪いの関係からできないらしい。」
「ご都合主義な呪いですね。」
「言い訳じゃない。だからこそフロッシュのやつも、呪いが解けるまで口が聞けたのに自分の正体を周りに言わなかったんだろうさ。」
「なるほど。」
オオサンショウウオ(仮)さんの話を要約すると。
フロッシュ・フェアディーンストさんとオオサンショウウオ(仮)さんは、同一の悪い魔女に呪いを掛けられ、それぞれ蛙とオオサンショウウオに変えられてしまったらしい。それから同じくこの国とルルヒ王国の国境付近をうろついているときに、姫と私に遭遇した。そして今、想定外の呪い解除魔法(物理)によってオオサンショウウオ(仮)さんより先に蛙の王子様の呪いが解けてしまった。なお、なぜだか詳しいことはわからないが、オオサンショウウオ(仮)さんは蛙の王子に心底恨まれているようである。
「呪いの解き方は蛙の王子様もオオサンショウウオさんも知らなかったんですか?」
「…………いや、」
「知ってるなら早く戻りましょうよ。」
酷く居心地悪そうに視線を彷徨わせ、意味もなく前足を足踏みさせる。やはり可愛い。
「知っているには知っている。だが具体的な方法がわからないのだ。」
「具体的?」
「…………真実の愛があれば元の姿に戻る、そうだ。」
「あい、」
魔法とは、いったいどのようなものなのだろうか。
真実の愛(笑)でも解ける。
殺意を乗せて壁に叩きつけても戻る。
どこのだれだか知らないが、魔女よ、少々適当過ぎはしないか。
最初のコメントを投稿しよう!