冒険の書 1 『その役割が俺ですか?』

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リクオは腕組みをしながら、あぐらをかく。 「モルソン、百歩譲って、この状況を受け入れよう。…ただ、ひとつ気に食わない事がある」 「なんだい?」 「あのさ、こう言うのって、もっとベタな感じで行くなら、主人公はニートとかダメ男くんでさ、年齢も10代とか20代じゃん?」 「ああー、確かにねー」 溜め息をつきながら続けるリクオ。 「俺いま32歳!仕事もバリバリの広告代理店で働いてる!!自分で言うのもなんだけど稼ぎ頭!!出世街道まっしぐらのエースなんだけど!!」 「ああー、そうだよねー?」 「こう言うのって俺みたいな奴じゃなくて、ゲームオタクのダメ男くんの役目っしょ?」 「まぁ、それも考えたんだけどさー、そこだけは一味違う感じで行きたかったワケよ」 「お前もうちょっと口調のキャラ設定を統一しろよ」 モルソンも短い足であぐらをかく。 「リクオさー、これとりあえず冒険に出ないといけない感じなんだよ、コレ」 「冒険?面倒なんだけど?」 「わかってくれよー。…これね、『僕達の世界』の勝負がかかってんのよ」 「は?」 「一応、この世界ね、人間ひとりにモンスター1体がパートナーとして付くワケよ。それでモンスターを育成してバトルする感じなワケよ」 「うわー、めっちゃありきたり」 「モンスター関連の世界も色々とあってさ、ウチはかなり苦戦してる方なのよ。…有名どころで行けば、ポケットな感じのモンスター世界とか、デジタルな感じのモンスター世界…」 「おい!ギリギリ!それ発言がギリギリ!」 「あと、コアなファンが多いのが、ファームが関わってくるモンスター世界かな。あ、あと人気なのは、ドラゴン的なクエストな感じのモンスター世界」 「伏字にしよ!せめて伏字にしよ!」 「いま言ったのは、みんな大手だから凄いワケよ。ウチはベンチャーだからさ」 「お前ら会社か!?」
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