フープ滞在記編胃が痛い王女様

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 そしてハクアの改革は騎士達にも色々な変化をもたらした。  ハクアの魔方陣の解析、研究の成果で装備に魔方陣を刻む事で、魔力を流すだけで補助系の魔法を発動出来る技術が作られ、フープの戦力はかなりアップした。  更にはハクアの出した糸から作った防具は【軟鋼鉄】のスキルが確定で付くため、性能の良い防具が作れる様にもなった。  そして何より、ハクア達の多彩なスキルの扱い方を見た兵達は、今までのただ教えられた事だけをこなす訓練では無く、自分に合ったスキルの使い方等を考える様にり、特にハクアのオリジナル魔法を見た魔法職達のオリジナルの魔法作りが活発になってきた。と、フーリィーやカークスも喜んで居た。  そんなハクアの起こした色々な事を考えながら仕事を進めて居ると、不意に外から大きな音が鋭い共に「今日こそ逃げてやる!」等と言う、後ろ向きな決意が響いて来た。  それに気が付いた澪が「もうそんな時間か?」と呟き。午後の修行の時間になったのでそのまま澪を見送り、執務室から見える訓練所を休憩がてら覗き見る。  そこには女神である心様相手に大立ち回りを演じる件のハクアが居た。  雷を纏ったかの様なハクアは、一ヶ月前まで方向転換が出来ないと言っていた筈のスキルを使い、さまざまな方向に方向転換しながら心様を撹乱して、その後ろの町へと続く道へと抜け様とする。  対する心様は目を閉じながらハクアの撹乱を見ず、泰然自若の構えで待ち構える。  隙が出来ずに焦れたハクアが、雷の勢いを使い一気に近付くと横をすり抜け様と駆け抜ける。  しかし、心様の腕は電光石火と言って良いハクアの動きに対応して、ハクアの事を掴みに掛かる。だが、その直前にハクアは急停止すると共に上へと高く飛び上がり、一気に場外へと飛び出して行く。  おっ、初勝利?私がそんな風に思った直後、ハクアの体が城壁を越える直前不自然に後ろに倒れる。よくよく見ると太陽の光に反射する何かが、ハクアの首に繋がっていた。  鵜飼いの鵜の様に引っ張られたハクアは、そのまま落下して今日も心様に引きずられて行く。  私は山の様な書類を築き上げた本人のその姿に、溜飲を下げながら再び書類仕事に戻るのだった。
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