0人が本棚に入れています
本棚に追加
夜の森は堪える。
寒さや、気味悪さ、不安に恐怖。
だが、哲平には、それ以上に、
いまだに舞に会えていない事が、一番堪えていた。
哲平は、持って来ていた懐中電灯を手に、ひたすら歩いていた。
ただ、舞にもう一度会うためだけに。
足が悲鳴をあげている。どれ位歩いたろうか?
足元も精神もふらつき掛けた哲平の目の前に、
ふと、見馴れた光景が見えてくる。
真っ暗闇の中、電灯の指す光の先には
確かに見覚えのある・・・
「湖だ・・・」
方向オンチのたまものか、
二人でいた湖に戻ってきたのだった。
だが、舞はいない。
「ハァ・・・ま、そりゃ、そうか・・・」
人一倍行動力のある舞が、じっとして
いられるわけがなかった。
哲平は、湖に近づくと、腰から座り込んだ。
色んな意味で、立っては、いられなかったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!