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哲平はうなだれた。
ただ、うなだれるしかなかった。
色々と考えなければいけない事が山のようにあったが、
疲れで、思考が追いつかないのだ。
そして静寂が続いた。
夜の森であるにもかかわらず、である。
それから、しばらく静かであった森に、
静かに弾けるような音が、一つ、また一つ・・・
風や生き物の鳴き声ではない音に、
哲平はゆっくり顔をあげた。
弾けるような音は湖からだった。
哲平は、水面に懐中電灯を向ける。
おだやかな水面に、気泡が、一つ、また、一つ・・・
「なんだ?」
哲平は、懐中電灯を湖に向けたまま、
水面一体を凝視した。
気泡は、なおも増え続けた。
気泡が、一つ、また、
人骨が浮かびあがってきた。
手、足、頭、背骨・・・・・・
嘗て人だった姿が、バラバラの骨となって浮かびあがってくる。
それが、十体・・二十体・・・三十・・・・四十・・・・・
「ひ、ひいぃいぃ・・・」
哲平は声にならない声を出した。
が、残っていたわずかな理性で、
ズボンのポケットからスマホを取り出すと、
震える手で、ゆっくり電話をかけだした。
「で、で、でてくれ・・ま、舞・・・・」
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