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川井家の灯りは、いつになく、ゆれていた。
寝室にある、唯一の灯りである蝋燭が、
一郎と舞の動きにあおられて、ユラユラゆれているのだ。
舞に、じりじりと近づく一郎、
後ずさりする舞・・・
「何が、呪いだ、何が?」
「いや、私は、ウワサとして、ただ・・・」
一郎は、トヨの側で立ち止まる。
「村のシキタリじゃ、仕様がねぇと思ったさ、」
「な、何がですか?」
「湖に生贄だすことにきまってんだろう」
「い、生贄・・・」
「これで村も安泰ってよ、泣く泣くトヨをよ・・・」
「トヨさんが生贄・・・で、でも・・・」
舞は慌ててトヨを見る。トヨも舞を見返す。
「そしたら、トヨが・・・トヨが湖から生きて帰ってきたんだ・・・
こ、これが、キセキでなくて、なんなんだ?」
「じゃ、じゃぁ、よかったじゃ、ないですか・・・」
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