第1章

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 やはり理解出来ていない様子の次郎は案の定首を傾げている。キヨも分かったような、分からないような微妙な表情だ。  「好奇心で聞きたいって訳じゃぁないの?」  「はい。この辺にはエビスや八百比丘尼の伝説も聞かれる福井県の一角です。大学の研究で歴史を専攻しているのですが、人魚と言うものが広く伝わっていく際に、どのような誤解や偏見を取り込んでいくのか……、それを紐解いてくのが、卒業研究のテーマなんです。いず、じゃなくて博隆君から半魚人の話を聞いたとき、この地域の慣習や口承を知れると思い」  「要は変な好奇心から知りたい訳じゃないってのは分かった」  「アタシもその辺は分かった」  一応でも理解したと告げる次郎にキヨも倣った。  「それじゃぁ、話して頂けるんですか?」  僕も当時の詳細については興味がある。物心が付いてたかどうかも怪しい頃の話だ。半魚人を見た、助けられたなどと告白した経緯もあり、僕は少なくないイジメを受けた事がある。が、真相を求めてじいちゃんやばあちゃんに尋ねても、答えははぐらかせるばかりった。嶋野の勝手に付き合っているものの、僕にも僕なりの都合と動機がない訳でもない。どうして僕は溺れたのか。誰に助けられたのか。実は僕も知りたかった。
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