第二章 未来のゆくえ

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「見よ、これが侵入者の正体だ」 「ジャガ、イモーー!?」  キャベツは目を丸くした。布の下から現れた侵入者の真の姿、それはまさしくジャガイモだったのだ。キャベツの目の前に、二体のジャガイモが並んでいる。イモでありながら、いや同じイモであるからこそ外見は瓜二つで、ホテルの従業員が間違えるのも無理からぬ話だった。もし背を向けられれば、キャベツですら見分けるのは難しいだろう。 「うう……」  布を使って手足を拘束したところで、侵入者が目を覚ました。置かれている状況を把握すると、床に転がされてなお、射殺す様な眼光で二人をねめつけてくる。 「……久しいな、アカリ」  先に言葉を発したのはジャガイモだ。やはりキャベツの知らぬ名だった。名前からすると女性だろうか。 「ハッ。男爵家のボンボンが、よくここまで来られたもんだ」  イモとイモの視線がぶつかる。ジャガイモがそうであるように、彼女もまたジャガイモを快くは思っていないようだ。 「――彼女は?」  キャベツとしてもこの侵入者の素性、そして何よりイモ二人の因縁が気にかかる。 「うむ、こいつはアカリといって、ジャガイモの中でも主に寒い地方――王城より北の地で絶大な権力を持つ一族の者だ」 「同じイモではないのか」 「一緒にするな!!」  キャベツの呟きに怒りを露わにするアカリ。彼女はジャガイモと同一視されるのをあからさまに嫌悪していた。 「アタシはそこの腑抜けとは違う。身も心も違う品種なんだ。アタシはアカリ、北のアカリ。覚えておきな、キャベツ野郎!」  敵とはいえ野菜、それも婦女子。キャベツが詫びの一つも述べようとすると、ジャガイモがそれを視線で止めた。オレに話をさせろ、そう訴えている。 「オレとて十把一絡げにしてもらいたくはないな」  烈火の如くまくし立てるアカリに対し、ジャガイモはあくまで冷静だ。冷静なままで、怒っていた。 「裏切り者め、何故ピーマンなどに寝返った」 「ナス科がナス科に味方して何が悪い!」  ジャガイモが冷淡に振舞うほど、アカリの怒りは猛る。 「あの方は……あの方は、忌まわしき世界の歴史を変えようとなさっているんだ!!」 「だからといって、これまでの暴虐を許すわけにはいかぬ」 「黙れ偽善者!」  感情が昂るあまり、目に涙さえ浮かべるアカリ。
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