第三章 夢のあとさき

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 今まさにキャベツのいる位置に立とうと夢見ていた友のことを思うと、少しばかり胸が痛む。これからの重責を考えれば悩みも尽きないが、それでも。 「では――城に帰還ののち、僕から改めて求婚を」  キャベツは、野菜千年王国の新たなる王となる覚悟を決めたのだ。 「安心しました。現国王トーガンも、世継ぎができ喜びますわ」 「では、早速帰路に――」 「勇者キャベツ、少々お待ちください」  他に積もる話もあろう、そう思い帰りを促したキャベツを、姫が少しばかり引き留めた。姫は体の割れたピーマンの傍らにしゃがみ、その手に何かを握りこむ。 「姫、それは」 「種です」  姫は、ピーマンの種のいくつかを拾っていた。 「ピーマンも、国の未来を憂いていたのに変わりはありません。間違った方法をとってしまったとはいえ――」  思えばピーマンが魔王を名乗って以降、常にその傍らに位置していたのがキャーロット姫ではなかったか。ピーマンにも怖れや懊悩はあったはず。悩めるものに寄り添い苦しみを理解して、それ以上の暴走を抑えていたのは姫の慈しみではないか。 「――もう一度、種から天地の恵みを身に受ければ、違った芽吹きもあることでしょう」 「分かりました。畑には心当たりがあります。落ち着いたら、蒔きに行きましょう」  こうして、勇者キャベツとキャーロット姫は魔王の城を後にした。残されていた二体の精霊馬を戦果に凱旋した英雄を、民は大きな歓喜と共に迎え、魔王ピーマン滅びる、及びシャーロット姫帰還せりとの報せはその日のうちに国中を駆け巡ったのである。
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