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「じゃあさ、寮長先生は僕のことを憶えているのかな?」
死闘を繰り広げたことだけは憶えている。
「多分ね。恨みを買ってしまったかもね。あれはそういう人間だから。
盗撮事件は確かにあった……でも、バレたきっかけは、同僚の悪戯心から画像の一部が公開されてしまったことが発端なんだ。
そのせいで転がり落ちた人生をあいつは他人の所為にすることで、生きるモチベーションにしていたんだよ」
「歪んでるね」
結局、僕のしたことは先生の恨みの矛先を、自分自身に向けちゃったってだけじゃないか。
それって、全然、落着(らくちゃく)じゃなくね?
やるせない気持ちのまま窓の外を眺めると、空が美しいグラデーションに彩られていた。
「ああ、歪んでいる。でも、歪みを持つのは彼だけじゃない。人間、誰しも歪みを抱えているんだよ。
その心の歪みが、あちらの世界の化け物とリンクするのさ。
大丈夫、あいつは二度と君には近づかないよ」
グラデーションは空色からオレンジへ、そして淡い桃色に変化する。
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