油の虹

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幸せそうな光景だった。 あんな風に祝って貰えたなら、自分の誕生日を悲しく思う事もないのに。 一般的な家庭の光景。 お父さん、お母さん。お姉さんやお兄さん、妹、弟。おじいちゃんやおばあちゃんも、僕にとっては遠い存在。 だって僕は家族に必要とされなかった。 要らないって放置されたんだ。 この施設の玄関先に。 「有り得ないから」 呟きは聞こえない様に口の中に留める。 僕より小さな子は、テレビの中のケーキに釘付けで、大きな子はまちまちに行動しながら皆を見ている。 危ない事をする子は居ないか、具合の悪くなった子は居ないか。 ここは家族になれなかった子供達の集まる大きな家。 だから、誰か一人の為の誕生日会何て無い。二ヶ月毎にまとめて祝うんだ。
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