油の虹

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雨上がりの学校帰り、水溜まり一つ一つに飛び込んでは飛沫を上げていた。 靴も服もどろどろに成るけれど構うもんか。 施設の大人に叱られたって、大きな子に怒られたって。 次はあそこと飛び込もうとした水溜まりに、僕よりも早く長靴でダイブを決めた子がいた。 一際派手に水飛沫が上がる。 同じクラスの子だ。 いつも変な格好をしている子。 例えば夏なのに冬物のニット帽を被ってきたり、お母さんの丈に合わないTシャツを着てきたり。靴下が左右色違いどころか、靴までちぐはぐだったり。 噂じゃネグレクトにあっていて、僕のいる施設に来るんじゃないかって言われてる子だ。 「うひゃははは。おもしれー」 そのままバシャバシャと飛沫を上げまくる。 あれじゃあ、せっかく長靴でも中まで水浸しだ。 「優斗、俺んち来いよ」 一人ではしゃいでいるかと思ったら、いきなり僕の手を掴んで駆け出す。 格好と同じで自由過ぎる性格だ。 こちらの都合なんか何一つ聞こうとしない。
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