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序章
早乙女修一郎は、警視庁捜査一課の刑事をしている。
目つきが鋭く、常に愛想のない仏頂面をしているが、スラリとした長身で、顔立ちは役者のような二枚目なので、密かに婦人警官たちの憧れの的だった。
とは言え、肝心の早乙女本人にはそんな自覚は全くなく、日々精力的に殺伐とした事件を追う毎日を送っていた。
そんな彼が、四年前に起きた、将来を有望視されていた犯罪心理学者による連続婦女殺人事件に興味を覚えたのは、とある個人的な理由からだった。
(渡会数馬、事件当時の年齢は三十一歳。J南大学の心理学部で助教授をしていた。一八〇センチを超える長身と、その秀麗な容姿で女子学生の間では絶大な人気を誇る講師だった。だが、血の繋がりのない義弟に対する歪んだ愛情から、義弟と親しい関係のあった女性を次々と殺害後に行方不明に。事件から四年が経過した現在も、その行方は杳として知れない、か……)
だが、その杳として行方が知れなかった男と、早乙女は実はつい数ヶ月前に、直接顔を合わせる機会があった。
「いけすかねぇ野郎だったな……」
「え、先輩なにか言いましたか?」
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