第一章

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 とりあえず、そんな状況にあっても、甘党の時哉の為に、有名高級菓子店で土産を買うことだけは忘れなかった自分を、早乙女は我ながら天晴れだと思う。 (……それと同時に、何だか気がつけば自分ばかりこいつのことを好きみたいで、悔しいんだよな……)  最初に好きだと告白をしてきたのは時哉の方だったはずなのに、今では早乙女の方がすっかりと時哉にはまっているような気がするのは、けして気のせいではないはずだった。  いったい自分は、何時の間にこの目の前の年上の男の、余裕と手練手管にはまってしまったのだろうか?  はっきりとした記憶はないのだが、とりあえず現時点で早乙女が時哉にすっかりと骨抜きにされていることだけは確かだった。 「こんなオッサンに癒しを求めるとは、相変らず早乙女くんは物好きだねぇ」  フワフワと、男にしては妙に愛くるしい笑顔を浮かべた年上の恋人は、そう言うと優しい白い手で早乙女の頭を撫でてくれた。  外見だけなら、早乙女と時哉は同年代にしか見えなかったが、実際には四歳の年の開きがある。  そのせいもあってか、時哉は時々、早乙女のことを子供のように扱うことがあった。  それが何だか悔しいと同時に、少しばかり早乙女にはくすぐったかった。  とりあえず、これまでにつきあった女たちには、早乙女はこんな真似を許したことは一度としてない。     
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