第一章

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 中には年上の女性も何人かいたが、早乙女は彼女たちに年上ぶった振る舞いをすることを許さなかった。  基本的に、早乙女は他人に弱味を見せることが嫌いで、事が恋愛でも自分でイニシアチブを取らないと気がすまない性格をしている。  なのに、時哉の態度だけは容認してしまうのは、悔しいが早乙女が彼に心底惚れているからだった。 (つーか、自分でも嫌になるほどメロメロだっつーの)  声が聞きたい。  顔が見たい。  触れたい。  優しくしたい。  どれもこれも、これまでにつきあってきた誰に対しても、ここまで切実には思ったことのない感情ばかりである。 「物好きだから、てめぇなんかとつきあってんだろうが」 「あらら、そういう可愛くないことを言うのはどの口ですか~?」  早乙女の可愛くない憎まれ口を聞いて、時哉が唇を尖らせながら、早乙女の唇を指先で抓んでくる。 「……おい、止めろ」  憮然とした顔で、眉を寄せて早乙女が首を振ると、時哉は声をたてて笑った。  そんな無邪気な笑顔に、不覚にも見惚れてしまう。 「早乙女くんはさぁ、何だかんだ言っても見かけによらず真面目だから、つい頑張りすぎちゃうんだよね」  からかうような口調で、けれど優しげな眼差しと声音で、時哉は早乙女に向って目を細めるようにして微笑んだ。 (ちっ、またガキ扱いかよ……)     
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