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時哉から甘やかされるのは、けして嫌な気分のすることではなかったが、それと子供扱いされるのは、また別の話だった。
男心も、色々と複雑なのである。
「見かけによらずは余計だ」
不機嫌に眉を顰める早乙女に対して、時哉はどこまでも屈託がない。
「まぁまぁ、落ち着いてよ。せっかくの男前が台無しだよ?」
ニッコリと綺麗に笑う相手に、早乙女は思わず毒気を抜かれて脱力をしてしまった。
早乙女は、顔立ちこそ端正な二枚目だったが、目つきが鋭く仏頂面なので、彼に睨みつけられると、強面のヤクザ者でも怯むと言うのに、最初に会った時から、時哉は一度も怯むことなく早乙女の瞳を見返してきた。
飄々として軽薄なようでいて、実際には時哉は芯の強い男だった。
そんな男が、年下の自分の腕に抱かれることを良しとしている事実を、早乙女はいまだに不思議に思っている。
確かに、先に好きだと口にしたのは時哉の方からだったが、この四年間と言うもの、他人を必要以上に近付けなかった彼が、いったいどうして自分を選んだのか……。
「……てめぇ、面白がってるだろ?」
問う声に覇気がないことに気がついたのか、時哉は目を細めると、宥めるように早乙女の唇に軽くキスをしてきた。
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