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「ふふっ、残念だが、今はまだおまえに殺されてやるわけにはいかないな。あの若造とのゲームの勝負が残っているからね」
不意に、思いがけない単語を聞いたような気がして、時哉は目を瞠った。
「ゲーム?それはいったい何の話だ、義兄さん?」
少なくても、時哉は早乙女からその『ゲーム』とやらについては、何も聞かされていなかった。
「……ほう、あの若造は、おまえには何も話していないらしいね」
わざとらしく目を見開き、両手を大げさに広げて見せた数馬の顔には、明らかにこの状況を面白がっているらしき表情が浮かんでいる。
「どういうことだ?早乙女くんと何を話したんだ?」
詰問するように詰め寄った時哉から、数馬はごく何気ない仕草で距離を取った。
「まったく、仕方がないな、時哉は。だが、あの男が何も言わないのに、私の口からそれを話すと言うのもフェアではないからね。どうしても聞きたければ、本人の口から聞くと良いさ」
義兄の足が、事務所の出入り口に向かっていることに気づき、時哉は咄嗟に回り込んで数馬の前へと立ち塞がった。
「あんたは、また好き勝手なことだけを言って逃げるつもりなのか?」
「可愛い時哉、残念ながら、おまえでは私を捕まえることができないよ。何故なら……」
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