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「まさかぁ、これでも本気で心配してるよ。いつだって、今日も早乙女くんが無事でありますようにって、俺は心の中で祈ってるもん」
その言葉が、満更嘘ではないことは、時哉の表情と口調からも伺うことが出来た。
普段が飄々としているだけに、こんな風に素直に時哉から愛情を態度で示されると、何だか気恥ずかしいような気持ちになった。
「……これでも、結構頑丈にできてるから、そう簡単には俺はくたばらねぇよ。だから、あんまり心配するな」
時哉が真剣に自分の身を案じていると分かったので、恋人を安心させようとする早乙女の声にも、自然と真摯さが滲む。
「ん……分かってる」
長い睫毛を伏せて、小さく頷く時哉の姿は、ひどく心許なかった。
(こいつのこういうところが、正直たまんないんだよな……
)
普段の時哉は、何だかんだ言っても年上の自立した大人の男で、そうそう隙のある男ではないのだが、早乙女と二人っきりになると途端に妙に健気で意地らしい一面を見せたりするので、どうにも翻弄される。
「なぁ、せっかく茶菓子も買ってきたわけだし、そろそろコーヒーくらい出してくれても良いんじゃねぇのか?」
このまま流れに任せて時哉を押し倒しても良かったのだが、早乙女はもう少しだけ年上の恋人に余裕があるところを見せてやりたかった。
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