第四章

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 至近距離で数馬に瞳の中を覗き込まれたと感じた瞬間、時哉の意識は、彼本人の考えを無視して徐々に遠くなっていった。  自分が、義兄が得意としている催眠暗示にかかったのだと時哉が気づいたのは、それから数分後に事務所のソファーの上で目覚めた時だった。 (くそっ、バカにしやがって……!)  数馬は、時哉が意識を失っている間に、幾らでも彼を好きな場所へ連れ去ることができたのにも関わらず、時哉をただ眠らせただけで、この場に残していった。  本気で、義兄が何を考えているのか、今の時哉には理解できなかった。  そして結局、時哉は数馬が自分の元を訪れたことを、警察に連絡して知らせたのだった。  最早、義兄が早乙女に対して明らかな害意を抱いていると分かった今となっては、時哉だけの問題とは言えなくなっていた。  早乙女の身の安全の為にも、早急に数馬を捕らえる必要があった。 「時哉、大丈夫か!?」  そして、時哉からの連絡に、捜査一課から飛んできたのは、当の早乙女本人だった。  予想はしていたが、時哉の話を聞いた途端に早乙女は、「冗談じゃねぇ!」と激昂した。 「……早乙女くん、落ち着いて」  宥めようと伸ばした手を、いつにない乱暴な仕草で早乙女によって振り払われて、時哉は困惑する。     
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