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「これが落ち着いてられるか!よりにもよって、俺の命をネタにおまえのことを脅迫してきやがったってのか?俺が、てめぇの枷になってるって言うのか……?あの気障野郎をぶっ飛ばしてやりてぇのは勿論だが、俺は、そんな自分自身が何よりも許せねぇんだ!」
普段はクールに見える早乙女だったが、その内面では実は激しい熱情を抱えていることには、彼と付き合うようになってすぐに時哉は気が付いた。
そして、そんな早乙女の、愛情深く激情家な一面を時哉はけして嫌いではなかった。
「早乙女くん……」
一度は振り払われた手を伸ばし、今度は振り払われる前に早乙女の身体に抱き付き「ゴメンね……」と囁く。
「……謝るな。てめぇが悪いわけじゃねぇ」
悔しげに吐き捨てる年下の恋人の姿に、申し訳ない気持ちになりながらも、「だけど……」と時哉はやや声音を変えて早乙女の顔を覗き込んだ。
「……実は、俺からも一つだけ早乙女くんに訊きたいことがあるんだけど」
時哉の様子が変わったことに気づいたらしい早乙女が、どこか警戒するような表情になる。
「なんだ、急に怖い顔をして……」
「ねぇ、義兄さんから聞いたんだけどさぁ、『ゲーム』って何のこと?」
明らかに早乙女がギョッとした表情になったのを見て、時哉の眼差しは途端に剣呑なものへと変わった。
自分の知らないところで、もしや数馬と何らかの取引でもしているのであれば、これは見過ごすことができないと、時哉の表情は険しくなる。
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