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しかし、そこにタイミングが良いのか悪いのか、事務所の備え付けの電話が鳴り響いた。
「……ほら、電話だ。俺に遠慮せずに出ろよ」
「言われなくても、出るよ。あ、言っておくけど、俺が電話している間に帰ったりしたら、俺、数馬のとこに行っちゃうからね」
時哉は勿論、冗談のつもりだったのだが、早乙女の表情は苦々しげなものへと変わった。
「俺を脅迫するつもりかよ」
「それが、早乙女くんにとって、脅迫になるならね」
ニッコリとわざと綺麗な笑顔を向けると、早乙女は苦虫を噛み潰したような表情で口を開いた。
「……なるさ。なるに決まってるだろ」
そりゃあ良かったと笑いながら、「はい、こちら久坂探偵事務所です」と電話に出た時哉だったが、電話の向こうから聞こえてきた、あまりにも不穏な台詞の内容に、思わず険しく顔を顰めてしまった。
『俺は神からの啓示を受け、あんたのところの、子供二人を攫った。無事に返して欲しければ、こちらの要求を素直に聞くことだな』
男の声には聞き覚えはなかったが、その話の内容から、数馬の崇拝者であることだけは分かった。
「おい、嘘だろ……。本当に新吾と芽衣を攫ったってのか?まさか、それが数馬の指示なのか?あいつらに何かあったら、てめぇらのこと絶対に許さないからな!」
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