第一章

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 たとえ自分の方が年下でも、恋人に頼りにされたいと思うのは、ある意味で男の本能のようなものだった。 「あ、そうだね……。今、コーヒー淹れてくるから、早乙女くんは先にソファーに座って待っててよ」  早乙女の腕から抜け出した時哉は、土産の洋菓子の箱を再び大切そうに抱えると、慌てて気持ちを切り替えたような明るい声でそう告げて、キッチンへと続く扉の向こうへと消えていった。  あとに残された早乙女は、腕の中から消えた恋人の感触を名残惜しく感じながらも、こちらもまた気持ちを切り替える為に、軽く頭を何度か振ったのだった。
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