序章

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 犯人逮捕までに要した日数は、およそ十五日で、その間は早乙女も自宅マンションには着替えを取りに三度ほど戻っただけである。  普通なら、強盗のあったコンビニのある新宿署の預かりになるはずの事件なのだが、犯人が二人組みの外国人で、背後に海外の大規模な犯罪組織が絡んでいる可能性がある為に、本庁の捜査一課と公安が合同で捜査を行うことになったのだった。  しかし、それも一昨日に犯人である中国人が二人とも捕まったので、ようやく一段落というところだった。 「また、今夜は久坂さんのところに直行ですか?本当に、随分と意気投合したんですね。最初は、久坂さんのことを胡散臭い男だとか、あんまり良く思ってなかったくせに」  不満顔でそう抗議する山田に、早乙女は「そうだったか」とわざとらしく惚けた口調で答えた。  山田が口にした『久坂』と言うのは、三ヶ月前の事件を切欠に知り合った探偵の名前である。  本名は久坂時哉と言って、今でこそ新宿で小さな探偵事務所を営んでいるが、以前は早乙女や山田と同じ警視庁捜査一課の刑事だった。 「そうだったかって、そうですよ。もう、俺だって、久坂さんと仲良くなりたいです。明後日は俺も休みですし、事務所に遊びに行っちゃおうかなぁ」  自分とは入れ違いで非番に入る山田のこの台詞に、早乙女は本気で嫌な顔になった。     
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