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警視庁では、時哉の話題は禁忌になっていたが、時哉と同期で、以前は彼と組んで仕事をしていたと言う先輩刑事の蓑和から、早乙女は少しだけ時哉の過去について話を聞くことが出来た。
その蓑和からも、時哉にはあまり近づかない方が良いと警告をされた早乙女だったが、それでもまだ時哉から離れる気にはなれなかった。
思い起こせば、その時点で早乙女は気づくべきだったのかもしれない。
そう、四歳も年上の同性で、しかも重たい過去を背負っていて、一筋縄ではいかない厄介な性格をしている相手に、ここまで自分が執着する理由に……。
(……相手が男だったせいで、気づくのが遅れたんだよな……)
この世に生まれてから、およそ二十六年。
これまでの早乙女は、ごくノーマルな性癖の男として生きてきた。
女にもてるわりには、些か女には冷たいと評されることも少なくなかったが、それでも男に興味を抱いたことなど一度もなかった。
そんなわけで、同性である時哉が、まさか自分の恋愛対象になるとは思ってもいなかった早乙女は、彼に惹かれていることには気づいても、それがある種の欲を伴う感情だとは時哉の方から思いも打ち明けられるまでは、考えもしなかったのである。
しかし、結局は時哉の方も早乙女のことを憎からず思っていることが判明したので、彼らは互いの思いを確認することに成功したのだった。
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