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若杉康太がここ最近行方不明事件が増えたことと魚の漁獲量が増えたことを関連付けて捜査するようになったのはここ最近のことである。 ここ八つ足市は昔はそれなりに名のある港町だったらしい。 昔というのは昭和や大正より前で記録さえ不確かなほど昔なのだ。 つまりその賑わいを知る人間はもうこの世にはいない。 今では少数の漁師が細々と自分の生活を維持するのにギリギリなだけの魚が漁れるだけだった。 話を戻すが若杉はこの八つ足市の警察署の刑事課に所属する男である。 最近八つ足市では多数の行方不明者が出ており、誘拐の可能性もあるとのことで大規模な捜査が行われていた。 分かっているだけでも42名の行方が知れずにいた。 警察の必死の捜査が行われた。かどうかは別として、何の手がかりも得ることはできなかった。 若杉の内心は穏やかではなかった。 というのも自分の育った町でこれほどの事件が起きているというのに先輩の刑事たちはどこかやる気のない態度で真面目に捜査をしてはいなかったからである。 若杉には先輩たちの態度に心あたりがあった。 というのも、この町では数年に1度今回のような行方不明事件が起きているからである。 若杉は26年この町で過ごしていたがその間に覚えているだけで4回今回のような事件が起きている。 そしてそのどれもが何の手がかりも得られなかった。 何度も似た事件があり、これだけの人数がいなくなっているのに証拠一つ残さない犯人を見つけることをすでに全員が諦めているのである。
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