第1章

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「こらこら…愚痴ってる暇があったら練習しろ…サボると置いてかれるぞ。」 その時、天の助けが現れた。 騒ぎを聞きつけ、職員室からやって来たのだろう…それともたまたま通りすがったか。 中肉中背の中年男性が少女の前に立ちはだかる。 やる気はなさそうだが、若者に殴って倒れるほどやわでもなさそうだ。 「先生だ!」 「これからなのに!」 「誰だ先公呼びに行った奴!」 刺激に飢えた青春バカの野次馬を取り込んだ…何を期待して裏切られたかと落胆する輩ども。 ヤジを飛ばし、騒ぎ立てる。 青春は面倒だ…時々学校の領分が消えていく。 「先公を潰せ!」 「我々の自由と青春時代のために!」 「吊し上げろ!」 そんな声も聞こえた気がしたが…いちいち説教して、子供可愛さのモンペが乗り込んでくるのも億劫だ。 とりあえず、そのあたりはシカトに限る…先生も大変なのだ。 「野球部が…。」 「サッカー部が…。」 両者のスポーツマンシップがカケラも失せている…なまじ鍛えている分、意地が抜けないのかもしれないが。 「こらこら、いつまでつまらん言い訳しとる? こんなつまらんケンカを敗退の言い訳にするつもりか? それこそ、女が去る話だと思うのだがね。」 先生はすぐさま、場をまとめていく。 男が女が恋愛などという、モテるモテない…惚れたはれたという下らん理由で力関係を作るのもバカらしい。 学校を何だと思っているのだ。 しかし、先生の方が一枚上手だったらしい。 「仕方ない…。」 バレンタインデーのチョコレートの数に響くと思ったのだろうか…両者の部活は身を引いて野次馬も去った。 場は一気に静まり返る。
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