第2部 6章

6/21
前へ
/265ページ
次へ
塾の帰り道、駅に向かい予定がない私はゆっくり一人で歩き出す。歩道橋を上がりきった橋の真ん中あたりで立ち止まり、いつもより低い場所で煌々と輝いてる満月に目をとられた。 蓮は今頃何してるんだろ? 流れる車と行き交う人が全く止まらない渋谷の街で、一人寂しく暫く空を見ていた。 消防車のサイレンが鳴りだしてふと我に返ると、いつもよりオレンジがかった満月があまりにも大きくて、また一人立ち止まって見ていた。 「池田さん、待ち合わせ?」 背後から聞こえる声に振り向くと、ネクタイと眼鏡を外した桜井先生が通りかかって、一瞬誰だか分からなかった 「あっ、そろそろ帰ります」 「じゃぁ駅まで送るよ, 遅いから」 、
/265ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2685人が本棚に入れています
本棚に追加