7.回想曲

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 二人は信じられないといった様子でいた。それは、そうだろう。身体を音に変えるなど、非常識的な願いを叶えるような装飾品があるなど考えられないから。 「私としても、魔女が何者なのか、探りたいのだが、なかなか、尻尾が掴めないでいる。何の意図があって、どこからやってきたのか。全てが分からないままだ」  魔女が街に姿を見せるようになったのは最近のことである、それまで誰も森の奥に彼女が住んでいることなど全く知らずにいた。だから、フラリと現れ、願いを叶える不思議な装飾品を売り歩いたことから、彼女のことを魔女と呼ぶようになった。密かに魔女について、調べさせてはいるが、その正体は未だに分かってない。どうして、そのようなことができるのか。装飾品を詳しく調べてもみても分からず、なにもかも謎のままだった。 「魔女の件は我々に任せてくれ。いずれ、何者なのか目的は何なのかを解明できると思う。それとは関係ないですが、お二人にお渡ししたいモノがある」  パラードは思い出したように言うと、謁見の間に備え付けてある小さな小物入れから箱に入ったネックレスとイヤリングを取り出し、パインとウィックに差し出す。 「これは?」  ネックレスはパインに、イヤリングはウィックに。 「両国のお子さんが、まもなく十歳を迎えると聞きまして、その節目として用意した記念の品だ。装飾品を扱う魔女の話をした後に、普通の装飾品を贈るのは心苦しいが、収めてもらえればいい」  この流れなら、魔女が造った装飾品が渡されると思われたが、パラードが用意したのは一般に流通しているのネックレスとイヤリング。それも、サイド王国でも一流細工師によって作られた高級品である。 「これはありがとうございます」 「きっと、息子も喜ぶでしょう」  願いが叶う不思議な装飾品の話を聞けば、欲深な人間ならそれを欲することだろう。しかし、パラード、パイン、ウィックはそこまで欲深い性格ではなかった。手元にあったとしても、生活の役に少しは立つだろうなぐらいにしか思っていない。
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