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実際にサイド王国の国民達は出回り始めた不思議な装飾品に驚かされこそしたが、日が経つにつれ、それほど大きな興味、感心を示さなくなった。なにせ、叶えられる願いというのが大したことないから。中にはウォーのように『身体を音に変える』といった願いを望む者もいるが、それは特異な方であり、多くの国民は『火が欲しい』や『水を出す』など簡単な願い事をするに留まっていた。
皮肉にもジュエリの狙いは外れてしまい、この国に大きな混乱を招くことはなかった。
「ところで、今しがた、ウォー隊長が仰っていましたが・・・」
パインは非戦闘地域の協定を結ぶ為の誓約書にサインを書き、彼にそれを手渡しながらパラードに聞く。
「結婚はいつ行うのですか?」
「それか、間違いなくする。この協定が結ばれたら」
大事な誓約書を書いている真っ最中だというのに、まるで井戸端会議のような話し合いだ。それだけで、三カ国の代表者である彼らの関係は良好であるともいえた。
パラードもサインをすると、それをウィックに手渡す。
良好であるからこそ、このような誓約書など不必要であった。両者の承諾だけでも十分なのだ。しかし、世の中にはそれだけでは納得しない者がいるのも事実だ。
「結婚か懐かしいな。私達はもう十年以上も前のことだからな。パラードは遅かったぐらいじゃないか」
「全く、その通りだ。私もウォー・リーもお互い、いい年だから、そろそろ、落ち着きたいと思ってな」
「落ち着くか・・・。残念だが、それはないな」
最後に残ったウィックは誓約書に自分のサインを書くと笑って言う。
「結婚っていうのは、想像以上に大変だ。なにせ、一人ではなく二人で生きていくことになるからな。一生の二人三脚だ」
「一生の二人三脚か・・・」
「だから、こそ結婚も人生も倍、楽しめる。これは、既婚者である私達ができるアドバイスだ」
「先程の装飾品(プレゼント)のお返しか」
いいものを返して貰ったと、パラードは笑みを浮かべていた。
ウィックが書き、これで三カ国間での非戦闘地域の協定は結ばれた。非戦闘地域にしてしまえば、国境を巡っての小競り合いは無くなることだろう。
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