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本音をいうなら、最初から国境なんてものは無ければいいと思っている。線を巡って争うなどどれだけ、馬鹿馬鹿しいことなのだろうか。それでも、人は境界線というのを求めないといけない。個人でそれを求めるのはいいかもしれない。誰だって自分の身を守ろうとする自己防衛本能があるから。だが、それを不特定多数が暮らす国に持ち込んだ時に姿は自己防衛ではなくなってしまう。不特定という不安定さはかえって混乱を招いてしまう。それが分かっていても、求めてしまうのだから人というのは不思議でしかたない。
「今思いついたのだが、パラードの結婚式を行うなら、久々にやらないか」
「それはいいな」
「何をだ?」
パラードは首を傾げた。パインは何をやろうとしているのか。ウィックはそれが何なのか分かったらしく頷いていた。
「奇跡の歌だ。あれを結婚式のフィナーレにでもやったら、盛り上がるし素晴らしい。あれは、平和を讃える歌でもある。新しい未来の楽曲に是非とも一つ加えてはいかがかな」
「奇跡の歌を?だが、あれは、四人の優れた歌い手が必要になる。バスは私、ソプラノはウォー・リーが担当するにしても、あとアルトとテノールが必要なはずだ。四人が揃わなくては奇跡は起きない」
「その点なら問題ない。なぁ、ウィック」
「そういえば、そうだな。パインの言うとおりだ」
二人は不敵な笑みを浮かべ肩を並べあった。
「実は黙っていたが、うちの娘、サクラサクは天才的なアルト歌い手なんだ」
「そして、私のところのワンドゥルもテノール歌い手としての才能がある」
「そうなのか!」
それぞれの国の子供達にそれぞれ、奇跡の歌を唄うのに欠かせない歌い手で足りないのを補えるという。それには、パラードも驚き声を上げずにはいられなかった。
「条件としては最高ではないか。結婚式を飾るのに相応しいだろう」
「確かに、しかし、いいのか。奇跡の歌は数十年に一度ぐらいに起こすから、“奇跡の歌”と呼ばれているのに。前に行ったのはお前達が結婚式を挙げた時からそんなに時間は・・・」
「それは、そうだが、せっかくの機会だ」
パラードの結婚式と聞きパインとウィックは協定のことなど忘れてすっかり、やる気になっていた。
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