7.回想曲

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 実にいい人達だとパラードは思う。  戦争の気配もない、平和がずっと続けばいいと。 「ここが、奇跡の歌があるとされる世界か・・・」  呟きは空から聞こえた。何も無い場所から。指揮棒が空を引き裂くように振られた。空は紙でも裂くかのようにスススと筋を残してポッカリを口を開ける。そこから彼が姿を現す。人の姿でありながら尻尾を生やしていた。その尻尾の先端はプラグのような変わった形状だった。 「ここなら、いい演奏ができそうだ」  それは、まだ夏慈(ゲジ)・楼院具(ローイング)との戦いで記憶を失う前の〈スロク〉、スキー・トロンボルであった。彼は鼻歌交じり歌をうたっている。気分は高揚していた。次から次と新しい音楽が頭の中に浮かんでくる。この真っ白な世界(ふめん)に、どのような曲を描くか。それを思い浮かべただけで気が【狂い】そうだった。 「奇跡に添えるべき曲、それを作曲できるなんて、【最狂】の喜びではないか」  三カ国によって結ばれた非戦闘地域の協定は同日、それぞれの国で公布された。国境に関係なく山岳地帯とそこに広がる樹海を含む一部の地域に対し戦闘行為を禁止するとした協定だ。  この協定の締結にはそれぞれの国で受け入れられた。なにせ、いつも小競り合いで被害に遭っているのは国境問題に無関心な市民であった。彼らにしてみれば、この協定が結ばれたことは喜ばしいことであった。  もっとも、一部には納得していない人もいるが、それはそれであって、一時的でも平穏を保てるのならばそれでいいではないか。  そして、もう一つ喜ばしい報が三カ国に公示された。 「聞いたか!」 「ああ。やっと、パラード国王は身を固める決心をしたようだな」 「喜ばしいことだ!ウォー隊長とならお似合いのカップルじゃないか!」 「そうだ!そうだ!」  サイド王国の国民達は大いに、この素晴らしき報に喜び合うのだった。 「パラード国王とウォー隊長に祝福を!」  サイド王国の国王であるパラードと民間守備隊隊長のウォーが正式に婚約したという報に。  すでに式の準備はウッドール公国とアイビック王国の協力を得て進んでいた。 「その結婚式でパラード国王とウォー隊長、それにウッドール公国の姫とアイビック王国の王子によって、奇跡の歌が披露されるそうだ!」
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