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どこからやってきたのかと不思議に思っていたが、キャロンが変身する姿、トコリコの見たことない武装、ピースの“魔法”。それらは、この世界にあるべきものではない。もちろん、ジュエリが造った装飾品に願ったことによって生まれたものという可能性もなくはないが。彼らの力は願いという次元の道具ではない。もっと、別な技術によって生み出されたもの。
半ば信じられなかったが、トコリコは自分達は別の世界から渡ってきた者だというのは本当のことらしい。
「・・・・」
気分を削がれたパラードは椅子に座ると替わりに、もう一度、目を閉じる。今日一日、色々と疲れた。久々に昔の声も出したから。
それにしても、パラードは妙な心持ちだ。いくら、トコリコに聞かれたからといって、簡単に歌のことを口にしてしまうとは。トコリコは人の心にしまっていることを喋らせる不思議な力でもあるのだろうか。
(ウォー・リー)
パラードは懐かしい人の名前を思い出す。写真に写っていた彼女のことを。
かつて、自分が王位に就いていた頃に民間守備隊隊長を務めていた彼女の名前を。
*
足音が聞こえる。階段を駆け上がる者の足音。
彼はその足音に聞き覚えがあった。
「ウォー隊長!パラード国王はウッドール公国とアイビック王国の方と面会中でして・・・!」
髭を生やした大臣が慌てた様子で、先行く女性を止めようとした。肩まで伸びるブロンド色の髪を靡かせる女性は立ち止まると、振り返り自分を止めようとする大臣の襟元を掴み上げて言う。
「なに?私(わたくし)に指図するおつもりなのですか!」
「い、いえ・・・。そのようなことは・・・!ただ、国王は・・・!」
「国王の事情など知りませんことよ!こちらとしては、日取りを急いで決めないといけないのですから」
女性は口では上品な喋り方をしているようだが、行動は粗暴、そのものである。掴み上げていた大臣の襟元を放して、彼を床に落とすと彼女はズカズカと足音を立てて行ってしまう。
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