7.回想曲

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 問題は複雑であり、国家でなくても民間での小競り合いが時折、発生してしまう。今は小さな民間での小競り合いが、その内、小競り合いが小競り合いで済まなくなるのではないか。国の代表者は少なからずそれを懸念していた。  その為、国境線を決めるよりも前に非戦闘地域を設けることが最優先課題として討議されていた。 「三国間の関係が危ういままでは、ウォー・リーと安心して生活できないからな」 「パラード・・・!そういうことならよろしいですわ!私は大人しく周辺の見回りに行ってきますわ」  ウォーはパラードの言葉を聞き嬉しそうにすると、瞬間的に彼らの間を通り抜ける。純白のドレスは風に靡き、窓から差し込む光り照らされ柔らかく、淡く輝いているように見えた。謁見の間からバルコニーに出て外へと飛び出す。  ちなみに、ここは最上階である。  最上階から外へ。バルコニーには地上に降りる為の階段や柱などない。ウォーは何もない空へと飛び出てしまった。常識的に考えれば、そのまま、落ちてしまう。しかし、ウォーは落ちることはない。彼女の首にはペンダントがかけられて、それが輝いたかと思うと姿が消えた。いや、消えたのではない、彼女自身が“音”になったのだ。音になったのならば、落下など関係ない。音を立てるも立てないも自在に着地することができる。  その様子をパラードは当たり前のように見ていた。いつもながら、無茶をするなと思いながら。対して、パインとウィックは驚きに目が点になっている。 「パラード国王。今のは一体?」  人間が姿を消すなど聞いたことがない。そんなのはファンタジー小説の世界での話でしかない。魔法も存在しない、この世界では信じられない現象だった。 「あれか。最近、サイド王国領土内の森に住み始めた魔女に仕業だ」 「魔女?」 「不思議な奴で、国民が魔女と勝手に呼んでいる。彼女が作る装飾品には、願いを叶える効果があるらしい。私がウォー・リーに渡したペンダントも魔女の作品だったらしく、ウォー・リーは仕事をしやすくしたいと言い出して、ペンダントに願いをかけ身体を自由に音に変えられるようにしたんだ」 「そんなことが・・・」
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